〜Archive 季節便り 2019〜
February 2019
私は自分が描いた絵を額装する時 基本的に 白い額を選びます
ですから 絵を飾ってくださろうとする方々から「白い壁に白い額は目立たないしボケるのでは?」という質問を頂きます
そして その絵を売っている息子は「柱や床材が濃茶色の家が多いのだから額は濃茶にした方が落ち着く」と主張します
今回は自宅の飾り方を見て頂こうと思います
○麻キャンバスに描いたアクリル画はその儘でも汚れを拭くことが出来るので 額は付けていません(写真1~3)
○和室の掛け軸は額には入っていないので 汚れはハタキをかけるだけかな? と母がやっていたことをおぼろげに想い出します そこで 絵を和紙に刷り枠に張り込み その儘掛けてみました(写真4)
○薄く白を塗った木地額は好きです(写真5)
○水彩画は紙に描くので どうしても額装をしなければなりません それをしないで もっと気軽に飾ることは出来ないのか?と探し続けていて やっと昨年 布地に刷って そのまま画鋲で壁に飾る ということに辿り着きました(写真6~9)
今年も"やってみたいこと"少しずつでも実現して行きたいと思っております
変わらずご支援お願い申しあげます
不二子
April 2019
今年も待ち焦がれていたミモザの花を描くことが出来ました 今ミモザは人気が高く卸売市場へもなかなか入荷してこないそうです
ミモザは私が子供のころから馴染のある花ではなく 中年になってから鎌倉の住宅地ではじめて見た花です
春はまだ先と思っていたグレーに沈んだ風景の中に 樹一杯に咲くレモンイエローはとても衝撃的な出会いでした
今でも その時の光景をハッキリ憶えています
季節はめぐり 毎年同じ様に咲く花を楽しんでいるのに 去年と似た絵は描きたくない…と 花を前にして 焦り立ってしまいます
今年も春一番のミモザを手に取って「違う私を見たい」と不安定な心をもてあましました
冬の間 花を買いに通う花屋さん-Flower Field(軽井沢)が3店舗目を我家の近くにOPENしました 私は大喜びです ミモザを仕入れた彼に「あなたがアレンジした花を 私に描かせてくれない?」
早速「クリスマスローズと白いアネモネ」の絵が描けました 私の絵のデータを撮ってくれているMOABさんが来て その絵を見た瞬間「色調が違うけど どうしたんですか?」
私は密かに「ヤッター!」…
ラナンキュラスとヘデラベリーの絵も 彼が活けました 暖かくなったら 彼が畑で育てている草花を…描かせてもらえることを 今から楽しみにしています
不二子
June 2019
5月はじめのある日 タクシーで出掛けた帰り路 「しだれ桜がある あの道を通ってみたい…」と頼みました
私の住まいは 住宅地として整備されている場所なので古い樹はありません
でも すぐ隣りには自然がまだ残っている地域があります(写真1~3)
「残念 桜は終わってしまったのね…」
と 道を曲がったら 白いモクレンが咲いていました(写真4)
「ワ! キレイ」
帰ってすぐに その花を描きはじめました(写真5)
木蓮→マグノリアと想っていたら 描いている絵の上に いろいろな状景が重なって見えはじめます
50代はじめのころ 親しかった友人が「マグノリアの花たち」という映画のVIDEOを貸してくれました 英語版だったので無理をして観ましたが 娘を亡くした母親が「私は 娘の誕生と その最後と 彼女の人生の一番大きな事柄に立ち会うことが出来たのは 幸せ」という意味のことを云ったことを思い出しました その友人も以前にガンで亡くなってしまいました
その次には 妹がアメリカ南部にいた時に マグノリアの大きな造花を送ってくれ それを以前暮らしていた鎌倉の居間に飾っていたことを思い出しました 「そう云えば 今日は妹の誕生日だけど… どうしているのかしら…」
私の絵をご覧になった方が 私のようにいろいろな事を アルバムを見返すように 思い出して頂けたら と存じます
また ある日は 軽井沢レイクガーデンに行き「クラブアップル」の花が咲いた枝を貰いました(写真6) と… また 沢山の映像が私を楽しませてくれます
不二子
August 2019
何年か前 植木屋さんの畑で 鮮やかな黄緑色の葉が茂る木を見かけました
「ワ!キレイ 描きたい!」…
そこを通るたび「キレイ! キレイ!」と思い続けていました
その後 軽井沢から隣り町に引っ越すことになり すぐに そのカエデを買って植えました
細い木はみるみる育ち今年はじめて下の枝を切りました
切った枝をガラス容器に活けて室内に飾ったら また「キレイ」…
この気持を絵にしたい と思ったのに なぜか手が進みません これを絵にしても誰も「美しい!」と共感して貰えないのでは…と感じたからです
どうして これを「キレイ」と思う感情が起きるのか? 幼少期からキレイと思う感情がある時突然起きる という経験を積み重ねて来て 現在の私が持つ感性になった と思います
それは 私自身 個の感覚だけれど同じような感覚を持つひとも多いという安心感が 私に絵を描かせて来ました
これからも 生きている限り 描き続けたいのです
不二子
October 2019
私がまだひとりっ子だった5才頃 ある日 両親と横浜松坂屋に行き そこで 濃茶のテディベアに会いました 「欲しい!」「買って!」とか云えない性格なのでただ小さな声で「あの熊 可愛いわね」…
10月は丸の内丸善(東京)での個展開催月です 去年終わった時には「来年はもう無理かな?」と思いましたが 今年も準備が出来ました
案内状を作ろうとした時 スーッと頭に浮かんだのは -私は壊れて行く…- という言葉でした
私は壊れて行く
前は 草の囁きを聞こうとしていた
今は 自分内部の悲鳴を聞いている
眠る前は その声をきき
眠った後は 毎夜夢の中で絵を描いている
「充分 描き足りた」とは思えない
もっと描きたい…
「草を描きたい」
これを案内状の内面に刷りたいと云ったら
「そんな事 云うもんじゃない!」と息子に反対されました
絵を描く という作業は 自分自身を他の場所に置いて 格好良い振りをした私を見せる事ではなく 今の自身を その儘表現することだと信じてやって来たので 息子に「どうしても これを書きたい」と反論しました
年老いたおかげで義務的な仕事が激減し 絵を描く時間は充分あります そして以前より 描くことが楽しくなっています
個展会場にお越し頂けたら うれしうございます
不二子
December 2019
今年も丸善・個展(東京)が無事終わりました 大勢の方々にご来場頂き本当にありがとうございます
年間180点前後の作品を作り続けていますが 個展を終えて思い返してみると スーッと描けた絵は少ないのです
今シーズンは毎週月曜日の午後 軽井沢レイクガーデンに画材を頂きに通いました ガーデナーの彼女が素材を切ってバケツに入れて置いてくれます 私はそれを見るのが楽しみで受け取ると 急ぎ帰宅し どの花ビンを使おうか迷いながらアレンジをし 仕上がりの絵も頭に浮かべます
ある日 いつもの様にガーデンに行ったのに 彼女が急に体調を崩しお休みで画材がありませんでした ーフッと気が抜けた私にタクシーの甘利さんが「いつもと違う道で帰ろうよ」と云って湿地っぽい草原の道を選び走り出し… と草むらに白いフランス菊(デイジー)がひと群咲いています
「あ あれ欲しい!」彼が切ってくれ少し行くとまた車を止めて 白い花が咲いている木の枝を少し 採ってくれました
家に着き 早く水揚げしないと と思い 慌てて白いバケツに入れました…
「この儘 描いてみよう」とすぐにバケツの儘描き上げました(下の写真)
この絵は 私の予想外 不意を突かれて生まれた作品なので心残りがなく 好きな一点になりました
今回の個展で この絵は一番早く予約が入りました。
構えず 力まず スーッと描ける絵描きになりたいと思います
来年も よろしくお願い申し上げます 良い年が来ますように…
不二子