〜Archive 季節便り 2022〜

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February 2022

今72才になる知人は 小学校の頃 小学校の行事として 
軽井沢の原野に自生する野バラ(ノイバラ)のローズヒップを走り回って採り 学校はそれを売り図書を買ったとのこと

「そのローズヒップは何に使われたの?」

「イギリスに送られイングリッシュローズの台木になったんだよ」

「へえ~」

鎌倉に住んでいた頃 ご近所に大輪の白バラが咲くお庭があり 頂いていました

と そのうち台木の野バラが伸びはじめ 野バラの花も咲くようになり 私は大喜びでその両方を頂き一緒に活けて描きました

その後 白バラの運命はどうなったのか知りませんが…

ウチの庭には 原種か それに近い野バラしか植えていないので 消毒の必要は無く肥料も入れたことがありません

でも大輪の美しいバラを咲かせているお宅は 毎週の消毒が欠かせないのです

現在 コロナワクチンを二回接種していても感染者が急増し 三回目を受けた医療従事者の方も発症したと聞きます 
イスラエルでは四回目の接種を始めたとか…

美しいイングリッシュローズと今世界中が直面するコロナの問題が重なって見えます

「私は"野バラ"になりたい!」

不二子


April 2022

連日 コロナ感染症のニュースを聞いていると戦中戦後の子供時代を身近に思い出します

あの頃は結核が多く 私が住んでいた湘南の海の近くには その療養病院がいくつも並んでいました 
そのサナトリウムという言葉の意味を知りたくて 何回もそこを探検に行き その度 母に怒られていました

ウクライナのニュースが多くなり 空襲警報のサイレン音は また私を過去に引き戻します

私の妹達は戦後生まれなので 戦前の豊かな時代を知りません 
長女の私だけは戦中の飢えた日々を 戦前を懐かしんで過ごしました

庭にミカン箱のテーブルを置き 水を混ぜた砂で作ったケーキをのせ 白い砂でその上にアイシング  
ケーキ周りは千日紅の花を並べて苺にします 戦前食べた不二家のショートケーキの出来上がりです

戦前 朝食で馴染みだったイチゴジャムの空ビンを縁の下から見つけ 
そのビンに草花を活けてケーキの隣りに置きます 
戦前プラスチックは無かったので ママゴトのティーポットセットもみな陶器で絵付けも本物のようです

そのティーポットに水を入れカップに水を注いで アフタヌーンティーを楽しみました

サナトリウムの白いペンキで塗られた窓と白い壁 空きビンに活けた草花の美しさ…

…87年も生きて来たけれど 私の中にこれ以上美しいものは見たことが無いのです

不二子


June 2022

 「これから どうなるのか?」「どう対処して行けば良いのか?」不安定な状態の儘 不安な気分を持ち続けています

毎年 寒い冬の間 家の前にある林に住むリス達の為に ヒマワリの種を軒下に置いています

小鳥達も「お困りだろう」と その食事も用意しています これからヒマワリの種は高騰するのでは と心配になり 多めに買いました

二年ほど前から 食事をすることが面倒になり 空腹を感じることも無くなりました

「西洋かぶれ」で西欧の料理ばかりが好きだったのに これらを体が受け付けなくなり 
和食しか入らなくなってしまいました 西欧文化の影響を受け続けて生きて来たのに最後は「お茶漬け」に帰ってしまったと実感するのです

先日「ホンゼンマイ」の絵を描きました(写真下)

胞子植物を描くことは殆ど無く 種を落として命を継いで行く植物が殆どです

胞子植物の歴史は大変古く 恐竜の時代に栄えていたと聞きます 
めまいがする様な生物の永い時間を空想すると「今」の重さが多少軽くなるように感じます

枯れた様に見えていた庭のブドウも遅くなったけれど 芽を出しました

不二子


August 2022

我が家は犬のGonn,60才目前の息子と私の3匹暮らしです 
私は独り暮らしを生涯続けるつもりだったので もう犬を飼うことは出来ないと 諦めていました

それが突然息子と同居することになり…

…と彼が犬を欲しがり…

 今 私は 狭いベッドでGonnと一緒に眠り Gonnの為に早起きをして庭へのガラス戸を開けます 
息子が運転する車で出掛ける時 いつもGonnは私の隣りの席に座り 犬が入れないレストランやカフェには行きません

テラス席は冬寒過ぎ 夏は暑過ぎ ほとんど外食は出来なくなりました

花を活ける時 2本では落ち着かず3本は必要です 次は5本 そして6本は無理なので7本入れます

バラが2本しか無い時は野草などを1種類 又は3種加えます

この3,5,7を守らないと何故か不安定な気分になるのです

Gonnが居ない日常はもう想像することも出来ません 私達はGonnがいつも一緒に居てくれる事で平穏に過ごすことが出来ます

夕方 少し涼しくなった広い公園で息子とGonnは歩きに行き 私は車に残ってこれを書いています

酷暑の季節 お身体大切にお過ごしくださいませ

不二子


October 2022

皆様いかがお過ごしですか?

世界中のコロナ感染問題 ある地域では猛暑や干ばつ そして洪水も各地で起こりそして戦争 その上物価高で値上げ

私達の日常は不安の連続でテレビのニュースはそればかり追いかけています

隣り街まで散歩がてら行ってみたいと思っても 後期高齢者で基礎疾患バリバリの私は「自粛すべきだ」と出掛けることを諦めます

以前は10月になると 沢山の方々に私の個展ご案内をお送りさせて頂いていました

今は「お出掛けください」とお願いすることも出来ません 「あのころは呑気で良かったなぁ」と嘆くばかりです

裏庭に出て見たらツユクサが沢山咲いていました 水色の小さな花はとても可愛いらしいのに一日花なので 夕方にはもう消えています

次の日は また次の花達が咲くのです 去年ここには随分沢山の種が落ちたのでしょう

「豊かさ」とは何なの? とツユクサが私に問いかけます 日々のニュースに惑わされず 心穏やかに 日々を過ごしたいと感じます

不二子


December 2022

家の前の木々がきれいに色づいたと思ったら

数日で葉が落ち あっという間に冬の景色になりました

 鎌倉に住む古い友人からメールが届きました

私は歩くことも面倒になってしまい鎌倉を訪れることも出来ず もう彼女に会うことも出来ないと思っています

 メールの中で彼女は短歌を送ってくれました

「主義じゃない  思想でもない反戦は 子供のときの日々の経験」

「生き延びて 無事に大人にならまほし 戦下のもとのウクライナの子等」

 戦前の日常について その記憶を話し合えるひとが身近にいなくなったと気付きます

 私の返歌は

「老婆友 同じ気持ち持ちながら 離れた所に まだ生きている」

「メールさえ やっと出来てる身分でも 話したい事 山ほどもある」

 今年6月12日に〈ホオノキの花〉の絵を描きました 葉はイキイキとして白い花が見事です

そして10月6日 今度は〈ホオノキの実〉が届きました 春はあんなに元気だったのに

「ひと夏過ぎたら こんな姿になってしまったの…」「今の私と同じ」と思いながらこれも描き上げました

若い時には 88才なんて空想すら出来なかったのに 
今 その年になってみたら まだ「やりたい事」「楽しみな事」沢山あります 
2023年が今年より明るい年になりますように

不二子