秋の個展に向けて絵を描き始めた5月中旬ごろには、どんな絵を並べたいと思っていたのか 何をイメージしていたのか、今はもう忘れています。

 冬の間を過ごした鎌倉の家から軽井沢の仕事場に来る途中、東京丸の内にあるコンランショップに寄り、黄緑色の大小のコップやボウルを買い同じ色の絵の具も何本も取り寄せました。

 その色が私の気分に良く合うという感覚がずっと続いているので、その陶製のコップを毎日何回も繰り返し使っています。朝、新しい絵を描きはじめる時には黄緑色の絵具を絵の中のグリーン部分にベースとして塗っています。なぜか今年はこの色がとても好きです。

 私は自分の主観や個性が前面に出る作品を作るよりも、自分の影は作品の中に残らないように消して、自然の植物そのものが絵を通して観る方にストレートに伝わるような絵描きになりたい、と思い続けているのに、どうして今年は自然が黄緑色っぽく見えるのでしょう…。


 豊富な素材に恵まれて、休みなく描き続け… 絵の中に登場する役者はどんどん増えていくのに「主役がまだいないじゃない…」という落ち着かない状態がずっと続いていました。

 8月19日の朝、友人の畑中さんが手一杯に丈の長い「ネコジャラシ」を抱えて来てくれました。私は大喜びで早速描きはじめ、出来上がったとき、
 「あっ、これは主役だ!」
 「なぜ展会場に主役が必要なのか?」
 「どうしてこのネコジャラシを主役だと思うのか?」

 私には解らないことだけど、なぜかこの「ネコジャラシ」は今年の主役なのです。突然登場した道端の野草が主役の座を取るなんて…。

 変化に乏しく、平坦な日々の繰り返しのような私の日常も、結構ドラマチックだなあ… とこの出来事を楽しんでいます。(9月1日)



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更新:2006年9月1日

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