この夏の陽射しは特別でした。 
腕を陽の光にさらすと、沢山の矢が刺さるような感じで、無知な私は
「紫外線がとっても強いんだな」と決めてしまい、外出する時は長袖を
着ることにしていました。樹々もかなり大変だったようで、どんぐりは緑の小さな実と

5枚位の葉がついた小枝を木の下に沢山落とし、
桂の木はまだ色づかない緑の葉をハラハラと散らせました。
ナナカマド、灌木や山ボウシもあまり実を付けていません。
地球が大変なことになりかかっているのかしら?と心配になるひと夏でした。

でも秋風が吹きはじめた草原や小さな空き地には、いつもと変わりなく
一面の「猫じゃらし」が穂を陽射しにキラキラ光らせてゆれています。
一番良く知っていて、幸せな感覚が溢れて来る好きな風景です。

私が50歳半ば、絵を売るようになったばかりの頃、
銀座の泰明小学校前のビル2階に額装を頼むために行きました。
「額代はどうしよう?」と心細い思いで窓の外を見たら、その古いビルのひさしに
小さな「猫じゃらし」が一列に並んでいました。
こんなに少しの土に草が生えるなんてすごいなあ・・・と
美しい植栽の花を見るよりも心なごんだ記憶があります。

私の心の中にある原風景は、今、目の前にあるこの「猫じゃらし」の空き地かも
しれません。柔らかな陽射しに柔らかく光って揺れている「猫じゃらし」は
幸せな気分もくれるけれど「何かたりない」「もっと嬉しくなる何かがほしい」
「もっと素敵なものを手に入れたい」という焦りを感じたことも思い出させます。

「美しいものを手の中に握ってみたい」という幼い頃からずっと変わらない
私の欲求と衝動の原動力になっているのは「この原っぱだったのかなあ・・・」

10月開催する丸善ギャラリーの個展会場に並べる102点の絵の中で
「猫じゃらし」が主役だと思ったのはその為だったのでしょうか。(10月1日)


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更新:2006年10月1日

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